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Weekly Magnets vol.005
私たちマグネッツが扱っている古着を皆様にもっと興味を持っていただき、古着のすばらしさを
お伝えできればと思い、その歴史やディティールのことについて紹介していきたいと思います。
Free Mason
公開以前より話題になっていた映画「ダ・ヴィンチ・コード」が封切りになりました。
小説から映画化になったようですが、皆さんはお読みになられましたでしょうか。
ちなみに僕はまだなのですが小説を読んだ知人から、話の内容にフリーメイソンに
触れている場面があると聞きました。フリーメイソン(FreeMason)とはその起源は
18世紀にまでさかのぼる活動内容や実体がいまいち明らかでない謎の多い団体。
実際辞書で調べてみても、「その実体は定かではない」と記載されていました。
そのフリーメイソンと僕たち古着屋さんの接点は?最近人気が再燃しつつある
カレッジリングですが、アメリカのアンティークショップで買い付ける際に見かける
通称「メイソンリング」と呼ばれるリングがあり、仕入れることがあります。
「メイソンリング」とはフリーメイソンのメンバーがその証として所有しているもので
そのリングは会員だった人間が団体を脱退した後手放したり、換金したりしない
限り市場に出回らないもので、大変希少な存在と言えると思います。
デザインも無数にあり、僕自身同じものを2つと見たことがありません。
今回はそんなフリーメイソンの実体に前編と後編の二部構成で迫ってみたいと思います。
-前編-
フリーメイソンの神秘主義
フリーメイソンの起源が石工職人組合であるなどというと少々疑問に思われる方もいるかもしれない。
近代フリーメイソンは大工の集団などではないし、建築作業にもまったく携わっていないからだ。
実はフリーメイソンリーにも大きく分けて二つのタイプがあり、中世石工職人組合以来のメイソンを
『オペラティヴ(実践的)フリーメイソン』、実践的な建築術と無関係なメイソンを
『スペキュラティヴ(思弁的)フリーメイソン』と呼ぶ。17世紀も後半となると石工中心の建築の仕事が減少し、
当時のロッジは存続の危機にさらされていた。そこで会員の財産を保護するために、建築者以外にも影響力を
もった貴族の入会を積極的に勧めることになった。近代に入ると、思弁的メイソンの数はますます増加したが、
それとは対照的に実践的メイソンの数は象徴主義を置き土産にして減少していくのである。
思弁的フリーメイソンがフリーメイソンに入会したのは、組織内部の秘密の知恵に近づきたいという欲求や、
中世建築と古代世界への素朴な関心のためであった。彼らはまた、当時ヨーロッパ知識人の間で大きな関心の的
であった神秘思想――カバラやヘルメス主義、錬金術、薔薇十字思想などを持ちこみ、フリーメイソンの象徴主義に
新たな要素を加味することになった。ギルド以来の建築道具や方法もまた実践的な用途を超え、倫理的な意味に
おいて重要性を持つようになった。フリーメイソンの代表的な象徴である“コンパス”と“直角定規”はその典型である。
メイソンはコンパスと直角定規を重ねたシンボルを自らの符丁としている。フリーメイソンにとって建築道具はただの
道具にあらず。コンパスと直角定規は一対の象徴であり、コンパスは「道徳」を表し、直角定規は「真理」を表す。

上向き三角形(コンパス)と下向き三角形(直角定規)の結合はダビデの星を形成し、男と女、陽と陰、天と地、
精神と物質など世界のニ元性の融和を表現している。個々の建築道具は人間の美徳と対応し、
コンパスは真理、直角定規は道徳、鏝(こて)は結束と友愛、槌は知識や知恵を象徴している。
コンパスと直角定規を重ねたメイソンのシンボルは道徳と真理の調和を表している。なぜか?
ヒントはソロモンの神殿である。実践的な建築技術を持たない思弁的フリーメイソンにとって、完成を志向するものは
いわゆる物理的な建造物ではない。彼らが建設するのは神の宿る霊的な神殿としての自己である。中でも神の設計による
ソロモンの神殿は完全なる人間を表象するものであり、人間の精神的発展の暗喩であるとする認識が形成された。
フリーメイソンが何よりも尊重するのは“道徳法”の遵守と、他者への“寛容”である。それは彼らの最終目的が――
喩えて言えばイエス・キリストのような“真実で善良なる人間”へと変容することだからだ。
人間の美徳はコンパスや定規などの建築道具によって暗喩され、すべてのメイソンはそれらの道具を用いることにより
自らが完全なる人間(ソロモンの神殿)となれることを暗示しているのだ。
フリーメイソンを理解するにあたり、避けて通れないのがこうした象徴主義であり、比喩や暗喩によって隠された教理の
数々である。先にも言ったが、フリーメイソンの象徴主義は思弁的メイソンが導入した18世紀の神秘的思想潮流、
特にユダヤ教神秘主義カバラや錬金術思想などが色濃く反映している。逆に考えれば、そうした神秘主義思想の
象徴哲学体系を応用することでフリーメイソンの数々の象徴を解き明かすことが可能である。
典型例はフリーメイソンの会員が参入儀礼の際、秘密の内に伝授されるという特殊な握手法である。
秘密といってもその内容は多くのフリーメイソン史家によってすでに明かされており、
現在ではフリーメイソンに関する著書を開けば誰でも知ることができる。
秘密の握手法はメイソンの三つの位階に一つずつ存在し、徒弟の握手法は『ボアズ』、職人の握手法は『ヤキン』、
そして親方の握手法は『ライオンの握手法』と名付けられている。中でも『ライオンの握手法』は、相手の親指と
人差し指の間に自分の親指を交差し、さらに中指と薬指の間をハサミのように大きく開くという奇妙なものである。
実はこの手の形とまったく同じものが古くから“祝福”を表現するものとして用いられており、ユダヤ教神秘主義
カバラの図像の中においてもしばしば登場する。『ライオンの握手法』がカバラの影響を受けたことは否定できない。
とはいえ、フリーメイソンも何の意味付けもなくそうしたシンボルを導入するわけではない。
そこには必ずフリーメイソン独自の象徴性と暗喩が付加されている。

『ライオンの握手法』 『カバラの図像』
ハサミのように開かれた指が意味するもの――それはフリーメイソンの重要な象徴である直角定規もしくは開かれた
コンパスである。さらに、その手の型で握手をすることは、直角定規とコンパスを交差させることを意味し、
メイソンが信条とする“道徳”と“真理”の調和を表現している(直角定規とはいえ、実際には直角ではない図像が
メイソンにおいてしばしば用いられることにも注意)。このようにフリーメイソンが用いる数々のシンボリズムは決して
無意味なものではなくそこには全て深遠な意味が隠されている。『フリーメイソンの基礎法』には次のようにある。
科学思想、宗教、倫理思想を知るために用語を象徴的に使うことは重要である。ソロモンの神殿は、象徴的存在であり、
この神殿を築いたメイソン、建設のための道具、材料を知ることは、フリーメイソンの本質を知ることになる。(第24条)
フリーメイソンの位階制度
フリーメイソンにおいて何よりも特徴的なのは、その位階制度である。位階制度はフリーメイソン各派によっても、また
時代によってもさまざまに変化しているが、その基本をなすものは、『徒弟』『職人』『親方』という三位階である。
フリーメイソンに加入すると、まず『徒弟』の位階に属し、次に『職人』、そして最後に『親方』の位階に進んで行く。
その名称が表している通りフリーメイソンの位階制は、実践的フリーメイソンの徒弟制度の組織に由来するものである。
1356年度の『ロンドン石工規約』によると、中世の石工は七年間の修行時代を経て『徒弟』となり、初めて仕事に就く
ことができる。その後、やはり7年を経て『職人』となり、実際の建築に着手できるようになって『親方』となった。
しかし、それは実践的な意味においてであり、思弁的メイソンが重視する精神的な意味においてではない。
あらゆる神秘思想体系あるいは古代密儀宗教において、人間の精神的・霊的な進化の過程は三つの階梯により
表現されている。ユダヤ教神秘主義カバラでは『志高世界』『中高世界』『下層世界』(あるいは神的、霊的、物的世界)
の三つの世界を想定し、グノーシス派の教義では人間には『霊的世界』『心魂的世界』『肉的世界』の三つの世界が
用意されているとする。同様に、新約聖書の多くの書簡を書いた伝道者パウロは、神から与えられる栄光には
『太陽の栄光』『月の栄光』『星の栄光』の三つが存在するとし、人は栄光から栄光へと神と同じ姿に作り変えられていく
と説いている。フリーメイソンにおける『徒弟』『職人』『親方』の位階制度も象徴的な階位として人間の霊的進化の
過程を表し、徐々に彼らの志向する“完全なる人間”へと近づくことを示しているのだ。

生命の樹の寓意画。その基本構造は三本の柱と10個のセフィロト、
22のパス(小径)、トリプルの三つ組み(三世界)、隠された知識(ダアト)である。
一方、現在アメリカで主流を占めている位階制は、『スコティッシュ・ライト』と『ヨーク・ライト』である。ともに
『徒弟』『職人』『親方』の三位階を基本組織としているが、スコティッシュライトはその上に三十もの上位位階を認めて
おり、ヨーク・ライトは七つの位階を立てている。ここで重要なのはスコティッシュ・ライトもヨーク・ライトも決して
メイソンの上部団体ではないということ。両団体ともメーソンの哲学を詳しく学びたい人のために用意された附属団体で
あり、よって命令や指導する権限も一切ないのだ。中でもスコティッシュ・ライトの組織は全33位階と非常に多いが、
フリーメイソン史家が33という数字を聞いて真っ先に想起しなければならないのは『ソロモンの神殿』であろう。
ソロモン神殿は建設以来33年、ヤハウェの神殿としてその輝きを放ち、その後破壊された。
またイエス・キリストの生涯は33年であった。フリーメイソンにとって33という数字はそれだけ重要な意味がある。
またユダヤ教神秘主義カバラとの関係においても22という数字は避けて通れない。カバラの象徴図形である生命の
樹には神的な属性や諸力、あるいは神性の顕現形態を表すセフィラと呼ばれる円形区分が全部で11個(うち一つは
隠されたセフィラ「ダアト」)存在し、その間を22本のパス(小径)が複雑に結び付けている。
カバラの教理において生まれたばかりの人間はマルクトに位置し、神の叡智と秘儀を求める者はマルクトからイエソド、
ホド、ネツァク、ティファレトへと段階的にセフィラを上昇することで霊性の向上を経験する。最上位のセフィラである
ケテルに至る過程には三つの世界が用意されており、それが先述した『至高世界』『中高世界』『下層世界』である。
| ブルーロッジ | 1 | 徒弟 |
| 2 | 職人 | |
| 3 | 親方 | |
| 4 | 秘密の親方 | |
| 5 | 完全な親方 | |
| 6 | 親密な秘書 | |
| 7 | 主監と判事 | |
| 8 | 建物の管理者 | |
| 完全なるロッジ | 9 | 選ばれた9人 |
| 10 | 選ばれた15人 | |
| 11 | 選ばれた12人 | |
| 12 | 建築の大棟梁 | |
| 13 | エノク、ソロモンのロイヤルアーチ | |
| 14 | 完全なる被選抜者 | |
| 薔薇十字の支部 | 15 | 東方または剣の騎士 |
| 16 | イェルサレムの王子 | |
| 17 | 薔薇十字の騎士 | |
| 18 | 薔薇十字の支部 | |
| ガドシュの法院 | 19 | 大司教 |
| 20 | 象徴的ロッジの棟梁 | |
| 21 | ノアの末裔またはプロシアの騎士 | |
| 22 | 王者の斧の騎士、レバノンの王子 | |
| 23 | 幕舎の長 | |
| 24 | 幕舎の騎士 | |
| 25 | 青銅の蛇の騎士 | |
| 26 | 恩寵の王子 | |
| 27 | 殿堂の指揮官 | |
| 28 | 太陽の騎士、熟練した王子 | |
| 29 | 聖アンドリューのスコットランド騎士 | |
| 30 | ガドシュの騎士 | |
| 最高法院 | 31 | 大審問長官 |
| 32 | 王者の秘密の棟梁 | |
| 33 | 最高大総監 |
33位階にあたる“最高大総監”は一般には名誉職とされ、メイソンの活動に
大きな貢献を果たした功労者に付与される特別な称号である。
33位階の詳細は上の表の通り。スコティッシュ・ライトが生命の樹の影響を受けていることは明白だ。基本の三位階
(徒弟、職人、親方)はカバラの三世界と対応し、『完成のロッジ』および『カドシュの法院』に含まれる22の階位は
セフィロトを結び付ける22のパスを表している。ここで30位階にあたる“カドシュの騎士”を除外したのは、
メイソン各派の違いにより、この階位が31位階“大審問長官”および32位階“王者の秘密の棟梁”と共に
『最高法院』を構成することがあるからだ。30という数字はフリーメイソンにおける一つの転換点となっている。
イエス・キリストがイニシエーション(ここでは断食、悪魔の誘惑、火と水の洗礼などの試練、儀礼を指す)を受け、
霊的な覚醒を遂げたのも30歳の時であった(このことに関しては後編で述べる)
とすれば“カドシュの騎士”の意味するところは、生命の樹の中で『至高世界』に参入するためには必ず通過
しなければならない試練の道――隠されたセフィラ“ダアト(知識)”に対応すると考えるのが妥当であろう。
とすれば、残る『ブルー・ロッジ』と『薔薇十字の支部』、および『最高法院』に含まれる10の階位は、
生命の樹を構成する三つの柱に配列された10個のセフィロトを暗喩していることになる。
具体的に『ブルー・ロッジ』は向かって左の柱である『峻厳の柱』を、『薔薇十字の支部』は中央の均衡の柱を、
そして『最高法院』は向かって右の『慈悲の柱』をそれぞれ表しているのだ。スコティッシュ・ライトの本質とは、
22の小径(位階)により結合された正の原理(慈悲の柱)と負の原理(峻厳の柱)、そして大極の原理(均衡の柱)
を学び、完全なる人間へと至る道程(生命の樹)を思弁することにある。
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